1966 MK-ll MK-ll Red Rooster
Meat Head Dragonfly Ezekiel








FUZZBOOK DAM Interview より

-----【プロフィール】-----
(1)David Andrew Mainさんと、Linzi Haynesさんのお二人で
やられているそうですが、二人の役割分担など、ありましたら
教えてください。

私は、回路デザイン、パーツのセレクトをし、計測器による各
電子パーツの値の誤差確認及び振り分けを全てして、組み込み
をします、Linzi Haynes,は主に、ケースやパーツのオーダーを
し、Meathead等の小型のペダルの組み込みを担当しています。
ロゴのスクリーンプリンティング以外の工程は私の工房で全て
手作業で行います。

(2)生年月日、出身地を教えてください。

私は、1975年11月1日、英国、ヨークシャー州の生まれで、両親
の出身地はスコットランドです。

(3)幼少期の頃、音楽に興味がありましたか? どんな音楽を
聴いていましたか?

例えば、"Mudhoney" "Tad" "Nirvana" "Sound Garden" "Monster
Magnet" のようなバンドで、彼らのレコードで初めてファズのサ
ウンドを耳にしたと思う。そして彼ら多くのミュージシャン達が
多大な影響を受けていた60年代からのバンド例えば、Hawkwind"
"The Stooges" "Blues Cheer" そして、"Black Sabbath"などのバ
ンドへと私はのめり込んでいきました。

(4)ギター、あるいは楽器を弾いていましたか? バンド活動は
していましたか?

当時聞いていた音楽にものすごく影響を受けて、16歳の時から今
D*A*Mを立ち上げる数年前まで、数多くのバンドでギタリストとし
て活動をしていました。

(5)幼少期の頃、電化機器など、すでに興味はあったのですか?
 その頃に作ったものがあれば、教えてください。

子供の頃、回路基板を見るのが凄く好きで、ただ中を見てみたいと
いうだけで、ラジコン車を分解したりしていました。バンドをやる
様になってからは、自分の持っている機材を色々とモディファイす
る様になっていきました。ミュージシャンとしてバンド仲間は皆お
金もあまり無かったので、バンドの中で私がみんなの機材の修理を
やってあげていました。もちろんちゃんと修理が出来るようになる
まではずいぶんと、試行錯誤を繰り返していました。

(6)初めて購入したエフェクターは何でしたか?

15歳の誕生日のプレゼントに"Rocktek Distortion"というのを手に
入れました。たしか、プラスチックのケースにピンク色のノブが付
いていた安物です。自分で初めて買ったエフェクターは"B&M Fuzz
Box"で当時25ポンドでした。当時は知らなかったのですが、"B&M
(Burns & Mullins)"のエフェクターは実際には"Colorsound"で作ら
れていて、"Colorsound"の"Jumbo Tone Bender"と同じ回路が組まれ
ていました。

(7)初めてエフェクターを作ったのは、いつからですか?

1995年、私が20歳の時から作り始めました。最初に作ったのは実は
ノイズゲイトでした。その当時にいたバンドで私は3種類のディスト
ーションペダルを時には同時に使っていてそのノイズがあまりにも
ひどかったので、、、、かといって新品は買えなかったので。

(8)エフェクターを作るにあたり、電子工学についての知識は、
どこで習得したのでしょうか?

近所の図書館でオーディオ電子工学についての本を借りては読みあさ
っていました。その図書館にあった、オーディオ電子工学の本はかな
り古いものばかりで、集積回路(IC)のことよりも、トランジスター
回路についての本が多く、それが逆に私の興味があった1960年代のFuzz
の回路を理解するのにとても役立ちました。ヴィンテージ・ムラード
のレファレンス・ブックや大変興味深い英国製オーディオ・プリアン
プの回路についてなどの本が沢山あって、自分自身が使う為の知識と
技術を習得して行きました。

-----【プロフィール:"D*A*M"】-----

(9)"Differential Audio Manifestationz(以下:D*A*M)"は、いつ
創設したのでしょうか?

D*A*Mのロゴを付けて販売し始めたのは、2002年で2004年から私の専業
になりました。

(10)"D*A*M"を発足した理由は?

最初は知り合いのミュージシャン達から頼まれるようになって、口コミ
でどんどん注文が入るようになったという感じです。

(11)"D*A*M"で、初めて作ったエフェクターは、何ですか?

最初のデザインは"Face Bender"というエフェクターで、"Fuzz Face"と
"Tone Bender"を掛け合わせたもので,現在の"Drag'n'Fly"に進化させま
した。

(12)"D*A*M"を初めて使った、プロ・ギタリストは誰ですか?

Monster Magnet と Wellwater Consipiracy の"John McBain"です。
Johnがニューヨークの"David Letterman Show"に出演した時にWellwater
Consipriracy のバンドで使用したのが初めてです。

-----【ビンテージ・エフェクター】-----

(13)ビンテージ・エフェクターに精通しているようですが、現在所有
されている、ビンテージ・エフェクターを教えてください。

私はあくまでリサーチの為にビンテージ・エフェクターを手に入れるけ
れどコレクターでは無いのでリサーチが完了するとそれを売ってまた次
ぎのものを手に入れる資金にする感じです。もちろん個人的に好きなエ
フェクターは手放さないけれど。色々持ってはいるけれど、すごく影響
を受けてそして好きなFUZZは;
1965 Tone Bender MKI.
1966 Vox Tone Bender,
1967 Marshall Supa Fuzz,
1969 Vox Tone Bender (silicon)
1975 EH Big Muff

(14)あなたが考える、最も優れたビンテージ・ファズは? その理由
と併せて、教えてください。

トーンというものは、とても主観的な事なので、どれが“最も優れた”
と断言するのは無理だと思います。その時々のバンドのそして音楽的な
シチュエーションによってそれぞれフィットした物がベストだと思いま
す。Fuzzの歴史のなかで、その後のFuzzSoundのスタンダードを作り上
げたと言う意味においては、"Tone Bender MK I"が個人的には面白いと
思います。
"Tone Bender MK I"は英国で初めて発売されたFuzzでとても原始的でア
タックのコントロールはFUZZのエフェクト音をコントロールすると言う
よりは、アナログのラジオの周波数帯をダイアルインする様な感じで、
日々の温度によってFuzzの歪み度合いも、ちがうようなものでした。

(15)"Tone Bender"についての知識が豊富なようなので、以下の質問
をさせていただきます。まず、"Tone Bender"は、"Sola Sound"、"VOX"
、"Color Sound"と、複数のブランド名で発売されましたが、それぞれ
に違いはあるのでしょうか?

英国人のGary Hurstというエンジニアが最初のToneBenderをデザインし
ました。そして初ロットのMKIは"Sola Sound"としてでは無く、彼の名前
で発売されていました。ToneBenderは色々な形態で色々な会社によって
製造、発売されていたので、その歴史はとても複雑であると言えるでし
ょう。1970年代半ばにSupa Fuzz とJumbo Tone Bendersが世に出るまで
Sola Soundの名前はTone Benderに使われていました。
Sola Sound Colorsoundについては、それ自身が矛盾していて、Sola Sound
Ltd,.が実際の正式な会社名だったのです。70年代に新たにデザインさ
れたエフェクターのラインアップの方をColorsoundと命名した訳です。
Sola Soundはその他多くの会社にTone Benderを作っていました。マーシ
ャルのSupa Fuzzが一つの例で、実際にはSola Sound製で、Sola Sound
Professinal MK IIと同じ回路が採用されていました。それ以外にも、
B&M, Park Vox, C&L,CMI, Rotosound,等の会社の為にもFuzzを作ってい
ました。
Vox Professinal MKII,とVox Tone Bender MKIIIはやはり、Sola Sound
製で、ペダルの上に黒のプラスティック製のプレイトが付いていた、一
般的なVox Tone BenderがVox社のイタリア工場で製造されていた、Tone
Benderです。

(16)"Tone Bender"には、MKI、MKII、MKIII、MKIVと、時代の変遷ごと
にバージョンがありますが、それぞれの違いを教えてください。

まず、MK(マーク)シリーズの名称はSola Sound Tone Benderのみに付
けられており、VoxやColorsoundには使われていません。
MK Iは1965年に発表され、楔型の形に折り曲げられたスチールのケース
で出来ていて、金と黒のハマーフィニッシュでした。この機種のベース
になったGibson Maestro Fuzz-Tone FZ1と同様に、3段階のゲルマニウム
回路が採用されていました。MKIはFZ1を更にモディファイして、よりサ
ステインを得る事に成功しています。ちなみに,MKIは9ボルト仕様で、
FZ1は3ボルト仕様でした。MKIは、ビートルズのアルバム、“ラバーソ
ウル”で使用され、英国の生んだ偉大なギタリスト、“ミック・ロンソ
ン”は長年のユーザーでした。

MKIIが発表される前には実はMK1.5というTone Benderの存在がありまし
た。我々が一般的に認知しているTone Benderの外観である、鋳物による
ケースが初めてこのモデルから採用されました。
MK1.5は1966年初期に発表され、2段階のトランジスター回路が採用され
ていました。同じ年の1966年後期に発表された、イタリア製Vox Tone
BenderとArbiter Fuzz Face,の回路はこのMK1.5をもとに設計されました。

MK1.5は大量生産された訳では無く、1966年に新たに3段階目の回路が加
えられ、Tone Bender Professional MKIIの誕生になります。2段階から
3段階のゲイン回路が加えられる事によって、更に強力なファズ・サウ
ンドを生み出す事に成功し、MK1.5よりもより多くのギタリスト達に支
持されていきます。ジミー・ペイジはこのMKIIをヤードバーズ時代から
初期のレッド・ツェッペリンまで、使用しています。

MKIIは1966年から1968年までのわずか2年間のみ製造されていました。
MKIIは製造が難しい機種でしかも更に、ベストなサウンドを出すのには
温度の変化にとても敏感なモデルでした。

MKIIIには新たにプレス・スチール製のケースと新たに設計された、回路
が採用されました。MKIIと同様に、3段階のトランジスター回路が採用さ
れましたが、最初の2段階の回路には、ダーリングトン社製のペアーのト
ランジスターが使用され、温度の影響による音質の影響を避ける為に、3
段階めの回路には、ゲルマニウムの固定ダイオードが採用されるように
なりました。更に、Tone Benderとしては初めてトーンコントロールが付
くようになり、初期のTone Benderよりもトーンの幅が広がりました。

MKIIIとMK IVの回路はほぼ同様で、違いは本当に微々たるところでした。
MK IVは、MKIIIよりも若干細めのケースになって、Sola Soundのペダル
としては初めてカラーバリエーションが出来ました。最初はスタンダー
ドのグレーで、オレンジ、黄色、シルバーと変わっていきました。MK IV
はSupa Fuzz とJumbo Tone Benderが発表されるまで、1970年から1975年
までの間、製造されました。

-----【個別モデル】-----

(17)"1966"モデルは、"VOX Tone Bender"のレプリカだそうですが、
"D*A*M"ならではのオリジナリティも加えてモディファイしていますね。
どういった点を改良したのでしょう?
最も重要な点は、ファズ・トーンがオーバー・ゲイトしたり、オーバー
・クリップしないように、トランジスターを正確にバイアス調整する事
です。私は“1966”をデザインするにあたって、10数台のヴィンテージ
Vox Tone Benderをリサーチしました。そして、バイアスの調整次第によ
ってそれぞれかなり音質が違っている事が解りました。例えば、リサーチ
にあたって、1966年製のTone Benderを調べた所、ある機種は、OC76と
SFT337を使用していて、他のほとんどの機種はSFT337とSFT363Eを使っ
ているのですが、OC76のファズ・トーンのほうが、スムーズで、ゲイン
を上げていないセッティングでも使いやすかったのです。
私の“1966”には、Super Bee スイッチをたしました。アウトプットに
値の高いキャパシターをかませることによって、低域よりのヘヴィーな
サウンドも可能にしています。オリジナルのVox Tone Benderは60年代
の、非常にダークなサウンドが特徴であるブリティッシュ・アンプに
マッチさせる為に、周波数帯をハイよりに設計されていました。しかし
ブリティッシュ・アンプとは対照的にもともとハイよりにデザインされ
たアメリカ系のアンプに使用すると、逆にトレブリーになりすぎるので
アメリカ系のアンプにもマッチさせるため、“Super Bee ”スイッチを
たすことによって、ファズフェイス的なややダークなボトムヘヴィーサ
ウンドも再現出来るようにしました。

(19)"Drag'n'Fly"モデルでは、"Dallas-Arbiter Fuzz Face"と"VOX
Tone Bender"を意識したサウンド・メイクをしたそうですが、このモデ
ルの特徴を教えてください。

まずデザインの基本にあたって研究したのは、ゲルマニウムを使用した
Vox Tone Benderとシリコントランジスターを使用したArbiter Fuzz Face
の2機種です。なぜなら基本的にこれら2機種の要素が私はとても好きで
私が思うそれぞれの良い点を組み合わせたかったからです。
初段階の回路にシリコントランジスターを使用して、次にゲルマニウム
トランジスターを使用してトランジスターをハイブリットにする事で、
まずゲルマニウムの温度への問題点を解決する事に役立ちました。
(18)でお答えしましたように、使用するアンプによっては、Vox
Tone Benderは、ややブライトすぎるし、Arbiter Fuzz Faceは、やや
ダークすぎるので、フィルターコントロールをたすことによって、ア
ンプを選ぶ事無く、両方の個性にあった、低域と高域をコントロール
出来るようにしました。また、それぞれのオリジナルのヴィンテージ
ペダルはワウペダルを前に置いて使えなかったので、ファズサウンド
に影響を及ぼすことなく、ワウペダルが使えるようにインピーダンス
の調整も施してあります。Drag'n'flyの回路をデザインするにあたっ
て、わたしの考えうる色々なアイデアをいれて、トーンをシェイプし
ました。

(20)"Professional MKII"モデルは、"Sola Sound Tone Bender
MKII"の完全レプリカとなっています。このモデルだけは、完全なレ
プリカにした理由は?

私は、英国で生まれたオリジナルのMKIIのファズサウンドは本当に素晴
らしいとおもいます。しかしながら、オリジナルは、非常にレアアイテ
ムで、万が一見つけたとしても、使える状態だとすると、800ポンド/約
¥20万ぐらいはすると思います。私は、多くのプレーヤーの皆さんに、
オリジナルMKIIの本当の素晴らしさとはどんなものかを是非とも体感し
てほしくて、このモデルは完全レプリカにこだわったのです。オリジナ
ルをご存知のかたは本当に少ないでしょうけれど、イギリス人として、
私はこの完全レプリカに大変こだわりを持っています。

(21)"Professional MKII"モデルでは、Mullard製のGermanium
Transistorを使用していますね。"OC75"、"OC82DM"、"OC81D"と、入手
状況によって使い分けされているようですが、それぞれの違いを教えて
ください。

私はムラード製のOC75とOC82DMを使い分けています。残念ながらOC81D
は現在良質のものは入手が非常に困難です。
OC75とOC82DMの違いはとても微妙なニュアンスの違いといえるでしょう。
OC82DMはほんの少しだけ、低域が多い感じで、ギターのヴォリュームコ
ントロールを絞るとOC75よりクリーンになる感じです。OC75はクリップ
感がハードで、ヘヴィーなファズサウンドです。
OC75は非常にレアな、MKIIの初期物のみに使用されていたOC81Dにもっと
も近いサウンドです。

(22)"Meathead"モデルは、"D*A*M"の完全オリジナルモデルですか? 
何か参考にした歴代ファズはあったのでしょうか?このモデルのコンセ
プト、特徴を教えてください。

Meatheadをデザインするにあたって、研究したのはやはりFuzz Faceなの
ですが、そのなかでも、1970年代中期のDallas Music Industriesのとて
もハイゲインのモデルとElectro Harmonic社製のLittle Muffです。これ
らの研究を通して、コントロールはシンプルにノブひとつながら、70年代
の偉大なロックのトーンを出せるようにしたかったのです。Meatheadのデ
ザインを作り込んで完成させたそのサウンドそのものは上記の2機種のサ
ウンドとは全然違いますが、十分に影響を受けたと言えます。
まず、Meatheadは限界に限りなくハイゲインにさせノイズは出来る限り
少なくする事、そして一つのコントロールノブだけで、出来る限りのサウ
ンドをシェイプする事を可能にしたいと思いました。MeatheadのDirtと
言うコントロールノブは、実はヴォリュームポットで色々なカーブを試
して、ノブを上げるに従って、サチュレーションがどんどんヘヴィーに
なるように設計しました。

(23)"Ram Head"モデルは、"Electro Harmonix Big Muff Pi"の
2nd editionをレプリカしたそうですが、"Big Muff"の中で、なぜこの
バージョンを選んだのでしょう? このバージョンと、他のバージョン
の違いを交えながら、説明してください。

ただシンプルに私はこのヴァージョンが好きだからです。特にトーンコ
ントロールが使いやすくて、ベースをフルにした時のサウンドは本当に
素晴らしいと思いました。1stヴァージョンも良いのですが、ヘヴィーで
サステインの優れた2ndが好みでした。それからそのグラプィックデザイ
ンも凄くカッコいいと思いました。

(24)"Ram Head"モデルでは、レプリカする一方で、"D*A*M"ならでは
のオリジナリティも加えてモディファイしていますね。どういった点を
改良したのでしょう?

まず絶対にサウンド面で忠実にオリジナルのサウンドを出す事と、機構
面で今使えるものとして改良しました。シールドされたケーブルを使っ
てノイズレベルを落とすとか、DCパワーとか、true bypass switching,
LED,つまり70年代よりは機構面での品質を上げました。

(25)"Red Rooster"モデルの特徴を教えてください。

このアイデアは、60年代にほんの少量だけ生産された、Dallas Range
Masterからきていて、特にBlack Sabbathのレコードにインスパイアー
されました。私はオリジナルの物よりももっとホットなRange Master,
にして、ブルースブレイカーとクリーム時代のエリック・クラプトンの
サウンドから、初期のブラックサバスのような、分厚いドライブサウンド
の両方を出せるようにしたかったのです。Red Roosterに使用している、
レンジコントロールがその答えで、これによって、クラシックなトレブ
ルブーストから、めいっぱいヘヴィーなベースブーストまで、サウンド
をシェイプする事が出来ます。それからノイズレベルを改良するため私
はミリタリー・スペックのゲルマニウムトランジスターを使用しています。

(26)"Sonic Titan"モデルの特徴を教えてください。

このモデルは基本回路から全て私の完全オリジナルです、チューブスク
リーマーをベースにデザインされている物は世に沢山ありますが、それ
とは全く違う真空管アンプ的なオーヴァードライブサウンドを再現する
ペダルをデザインしたかったのです。JFET pre-ampをインプットに採用
する事によって、入力信号に非常に敏感に反応して、ギタリストのタッ
チに対して高級ブティークアンプ同様のフィールを持たす事が出来まし
た。JFET pre-ampのセクションから次は、よく見られるオペアンプでは
無く、パワーアンプ・チップへと回路はつながっています。パワーアン
プの歪みを再現出来るようにペダルの中にパワーアンプセクションをデ
ザインし、基本回路はアンプと同様に構成されていて、プリ部からパワ
ー部をプッシュすることによってオヴァードライブからディストーショ
ンへと音を作っています。

-----【ファズ関連・質問】-----

(27)ファズとディストーションの違いは? 音質的な側面と、回路的
な側面から、あなたの考える違いを教えてください。
私の考えではまず、ファズは常にディスクリート・コンポーネント、つ
まりICではなく、トランジスターを使うべきだと思います。
もちろん私たちは常に主観的な音の話をしている訳ですから、絶対は無
いですが、私の考えでは、トランジスターは良質なファズトーンを生み
やすく、ICは良質なディストーションを生みやすいのではと思います。
音質的には、ファズはクリップ感がハードな感じで、ディストーション
は逆にソフトな感じといえるのでは。もちろん使用したダイオードによ
っては、同じディストーションのカテゴリーのなかでも、MXR Distortion+
のようにややソフトなファズサウンドを持つものもあれば、シリコンを
使用したDOD250のようにとてもハードなサウンドのものもありますね。
ファズは基本的には、低域に対してサチュレーションをより起こしやす
く、ディストーションよりピッキングのダイナミクスは低く、ディスト
ーションは、もっとスムースな感じで、トレブル、特にミッドにポイン
トがあって、ピッキングのダイナミクスはファズよりある感じだと思い
ます。しかしながらやはり例外もあって、例えば、Vox Tone Benderは
ピッキングへのダイナミクスがとても良いし、ProCo Ratなどは、セッテ
ィングによっては、結構ファズっぽい感じになると思います。

(28)ゲルマニウム・トランジスタを使うと、どのような効果が得られ
るのですか?

ゲルマニウム・トランジスターはとても有機的で暖かみのあるトーンを
生み出すと思います。心地良い歪みを生むし、シリコンのように、ラジ
オ電波からの影響がない。もちろん温度の変化には影響されやすいけれ
ど、その弱点をカバーしてあまる程の音質的な差があります。ゲルマニ
ウムはシリコンよりも、低電圧でクリップしてよりスムースで暖かみの
あるサウンドです。また、シリコンほどハードなクリップ感はないけれ
ど、よりアンプに近い反応のしかたをすると思います。

(29)ゲルマニウム・トランジスタは温度などにも敏感だそうですが、
回路を組む上で、注意されていることは?

回路のどの部分に使用するかによってですが、十分な注意が必要です。
私のモデルを例に挙げると、ゲルマニウムを組み込むとき、MKIIのほう
が1966よりも、温度に関して慎重にやらなければなりません。特にハン
ダ付けの時にオーバーヒートさせないよう注意するとか、パーツから出
ている“足”を短く切りすぎないとか、、、、

(30)ハンダや配線材など、特別なものを使っていますか?

英国製の高品質の"Antex"のハンダを使用しています。鉛を含まず、2.5%
の銀と0.5%の銅を含み通電にすぐれ、非常にしっかりと固定したハン
ダが出来ます。配線材もやはり、英国製のもので、PVC合成絶縁された
銅芯の高級配線を使用しています。

(31)使用するパーツ類の選別方法に、こだわりがありましたら、それ
を教えてください。

まず殆どは英国製のものにこだわっていますが、第一に品質が絶対条件
です。それから個体差のあるパーツはすべて計測器で数値をすべてチェ
ックしてからそろえていきます。

(32)どのような方法で、“音決め”をしているのでしょうか? 音質
測定器など、使いますか?

私は、最終的な“音決め”は常に“耳”だけで決めています。つまり、
計測器では判断出来ない要素が沢山あるからです。例えば、ギター本体
のヴォリュームレベルにいかに反応するか?ピッキングの強弱にいかに
トーンが反応するか? 色々な音量レベルでいかにサウンドキャラクタ
ーが変化するか?他のエフェクターにどのように反応するか?他のエフ
ェクターを前後に置いた時にそれぞれどのようにサウンドが変化するの
か? 本当に人間の耳にしか識別できないことが沢山あるし、結局、地
球上に人間の脳より優れたマシンなんて無いと思うけど??

(33)製品化する前の段階で、プロ・ギタリストによるサウンド・チェ
ックなど、行なっているのでしょうか?

いいえ、しません。あくまで私が最終判断をします。ただし、バンド状
態でのチェックはします。つまり他の楽器とのブレンドは最終的には最
も重要なので、私のイメージしたサウンドキャラクターが実際にバンド
シチュエーションで再現出来ているかは私にとって重要なポイントです。

(34)実際にギターやアンプに繋いで、サウンド・チェックをする場合
使用しているギターやアンプの種類を、(公表できる範囲で)教えてく
ださい。

もちろんなんでも公表できますよ!私はクリーン系の英国製の真空管ア
ンプを使用しています。
まずは、70年代のMATAMP Green GT120 head と WEM Dominator.あと2
種類の4X12“のスピーカーキャビネット。一つの方は、1968年のセレッ
ション・グリーンバック2発と1964年アルニコG12が2発が搭載されて
いるキャビです。もう一つの方は、1970年代のセレッション G12が4
発搭載されているキャビです。後はMATAMP のMINIMATを使っていて
これは2wattのアンプなのだけれど、オーバードライブがすごくよくて
他の2台のアンプと比較する時にコントラストとしてとても良いんだ。
ちなみにこのMINIMATはレコーディングにも最適です。あと、ギブソン
とGordon Smith のギターと、ギブソンとアイバニーズのベースかな?
とにかくシンプルで、ピュアーなクリーン・トーンを出せるものを使用
しています。ピックアップはアルニコを使っているものが好みです。ア
ルニコは、自然な歪みが出せて、ファズのトーンへの反応がナチュラル
だからです。

(35)モデルを開発する上で、回路を作る時に、最も神経を使うのは、
どこでしょうか?

もちろんサウンドクォリティーが絶対ですが、同時に楽器としてのクォ
リティーを非常に大切にしています。この二つの事柄はお互いに密接に
関係していると思います。

(36)現在は、アナログ方式のスイッチを採用していますが、電子式を
使わない理由は?

FETのスイッチングは確かに静かで良いのですが、信号に対して部品が
また増えることになって私はそれが好きではないのです。
注意深くパーツをセレクトして、シンプルな回路構成を組む事によって
得る事が出きる“ピュアーなトーン” それを私は常に追い求めています。
クラシックと言われているアンプを例にあげると解りやすいと思いますが
とてもシンプルなデザインで皆それぞれが素晴らしいトーンを持っていま
す。オーバーデザインと言うのでしょうか?回路が複雑になればなるほど
私には、音が作り物のようなリアルでは無くなってしまう感じがします。
私は、ギターやベースが、エフェクターとアンプの組み合わせに自然に反
応出来る状態、つまりプレイヤーにとっての楽器の一部であってほしいの
です。もう一点、true bypassのスイッチはプレイヤーにバッファーとか
ラインドライバーなどを足すオプションが与えられますが、FETスイッチ
にはそのチョイスが出来ません。



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